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【読書3】おっぱい先生

 

おっぱい先生

おっぱい先生

 

 インターネットには載っていない、知る人ぞ知る母乳外来専門の助産院「みどり助産院」のお話。様々な母乳トラブルを抱えた母親の駆け込み寺のような助産院で、あるお母さんから、小さなきっかけで知り合ったお母さんへと助産院のことが伝わり、どんどん話が進んで行く。

 出産を経験した私には、すごくリアルな内容だった。私自身、予定日より出産が早まり、入院期間中は、「おっぱいが張って熱も持っているのに母乳が出ない、さらに子供がなかなかうまく吸えない!!」という状況。入院中の病院に母乳が出るようなケアができる助産師さんがいない、「このままでは育てられないので、退院しても出ないようなら、母乳を止める薬を飲んで完全粉ミルクに切り替えた方が」と言われてしまい、途方に暮れた経験があって、自分で母乳外来をしている助産院を探して、出張で助けてもらった。結局母乳は出るようになって、後から「なーんだ心配しすぎたなー」と思ったけど、悩んでいる最中は本当に辛かったな。

 話に出てくるおっぱいトラブルを抱えたお母さんたちは、産院や、外出先のトイレなどで、たまたま出会い、助産院の存在を知り、困難を解決して行く。子育て中、他人に言われた何気ない言葉に傷付いたりするけど(いきなり、スーパーとかで知らんおばちゃんに「赤ちゃん可愛いわねー!母乳?」など聞かれたこともある)、反面、何気ない言葉で助かることもある。そんなことを思わせてくれた本だった。助産院の話だけど、出産経験や男女問わず、育児や助産師さんのことについて、学べる本だと思う。

 誰しもが母親になるわけではないけど、誰しもみんな赤ちゃんだったんだよな。

 作者の泉ゆたかさんは、今まで時代物の小説を書いていて、この本が初めての現代小説らしい。そこにちょっとびっくりした。他の著書も読んでみたいな。